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脳ってなんで必要なの?~脳の起源~

ところで原点に戻ってしまいますが、
「なんで脳って必要なのでしょう?」


同じ生物でも植物には脳がありませんよね。
ここにヒントがあります。


今回は脳の起源を探って行きたいと思います。


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図:脳の多様化の系統図
図はこちら [2]よりお借りしました


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拍子抜けみたいな答えですが
動物は「動く物」であるがゆえに脳を必要としました。


約12億年前、多細胞生物に進化した遠い祖先は植物と動物に進化の過程を分かちます。
植物は太陽光のエネルギーを光合成細菌を葉緑体として同居させることができたので、エネルギーに不自由する事がなくなり、座して食らえば良いようになりました


それに対して動物は太陽エネルギーを直接利用できないので、そのエネルギー源を動いて獲るほかはなく「動く物」という動物になりました。


動物は地球の重力に抗して動くために、収縮運動をする筋肉を発達させ、速やかな収縮運動を間違いなくおこなうために神経という電線のネットワークを張り巡らせた。
この神経電線が数万、数億と集まったのが動物の脳なのです。


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図はコチラ [7]よりお借りしました。


さて、我々がイメージする「脳」に至るまでにはどのような進化の経過があったのでしょうか。


●散在神経系
まずクラゲ・ウニ・ナマコのような腔腸動物になって、はじめて全身に原始的な筋肉と神経が見られるようになります。
長い突起をだした神経細胞が一様にまばらに散在し、互いにその突起で繋がっています。
よって一個の神経細胞の興奮は全ての神経細胞に伝わります。


●集中神経系
さらにプラナリア(扁型動物)、ミミズ・ヒル(環型動物)になると光を感じる眼をはじめ、接触、圧力、科学物質を感じる受容器と連絡する神経細胞の集団(神経節)をつくりました。原始的ではありますが脳の出現です。


●ハシゴ形神経系
さらに進化してカイ・タコ・イカなどの軟体動物、昆虫・クモ・カニなどの無脊椎動物になると神経はさらに発達し、動物の自由度も大きくなる。これらの動物ではじめて電線と化した神経は体内のところどころに数万と集まって、「神経節(ガングリオン)」という小型の脳を作ります。
つまり、タコやイカ、昆虫は脳は体のあちこちに分散しているのです。
※えぐい話ですがカマキリの頭を切り落としてもそれなりにカマを立ててくるのは、分散した神経節にかなりの程度の統合作用を備えているからだそうです。


まだまだ我々がイメージする脳までは隔たりがありますね。


●管状神経系
さらに進化して脊椎動物になると何がちがうのでしょうか?
 第一に「神経節」が神経細胞の塊であるのに対して、脳と脊髄は中心にが通っている管の形式であること。
 第二に神経節の連鎖が消化管の腹側にあるのに対して(腹髄という)、脳脊髄は消化管の背側(脊髄という)にある事にあります。


一番簡単な脳脊髄はナメクジウオやホヤなどの原索動物に見られます。


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ホヤの幼生の脳
写真はコチラ [9]よりお借りしました


しかし、この段階ではまだ脳に相当する部分は穴がやや広くなっている程度であって、脳と脊髄の区別はありません。
脊椎ができてくると、一番下等な円口類(ヤツメウナギ)でもすでに脳と脊髄の区別がハッキリしており、脳の構成は高等動物のそれと本質的には同じになります。


ところで、脳が発達するにつれ、脳に対する脊髄の比重が小さくなっていきます。
もともとは脊髄にも備わっていた統合作用を脳に集中分化させることにより、複雑、微妙、かつ精緻な適応行動を可能にしていったのですね。

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