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愛と信頼の「脳内ホルモン:オキシトシン」

実言論第一部サル時代の同類闘争と共認機能 [1]で親和回路を形成する脳内物質として仮定されていたオキシトシンに関して、次のような記事が出ていました。

出産や授乳の際に分泌され、対人関係や人への信頼感の構築にかかわるとされる「オキシトシン」というホルモンの分泌に「CD38」というタンパク質が重要な役割を果たすことを、金沢大などの研究グループがマウスの実験で突き止め8日、英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。

そこで、オキシトシンの研究はどのぐらい進んでいるんだろうと思い最近のオキシトシンに関する研究について調べてみました。
すると、オキシオトシンが親和物質であることはほぼ定説化し、アニマルセラピーなどの効果を計る指標としてオキシトシン濃度が使われています。そして、なんと驚くことにオキシトシンは「信頼と愛のホルモン」として、オキシトシンスプレー [2]なるものまで商品化されているのです。
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(オキシトシンスプレー)


最初に目に留まった記事の全文を引用します。
「ニュース:紹介」対人関係構築に関与か マウスのタンパク質で確認 [3]記事:共同通信社:【2007年2月8日】
 

出産や授乳の際に分泌され、対人関係や人への信頼感の構築にかかわるとされる「オキシトシン」というホルモンの分泌に「CD38」というタンパク質が重要な役割を果たすことを、金沢大などの研究グループがマウスの実験で突き止め8日、英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。CD38は白血球表面や脳などにあるが、脳での機能は不明だった。
 金沢大の東田陽博(ひがしだ・はるひろ)教授(神経化学)は「対人関係が築きにくいといった一部の自閉症にCD38が関係している可能性もあり、治療や診断の手掛かりになるかもしれない」と話している。
 同グループが、遺伝子操作でCD38を欠損させたマウスの行動を観察したところ、雄は既知のはずの雌をなかなか認識できず、雌は子どもへの注意が散漫になるなど行動に異常がみられた。こうした行動は、オキシトシンを欠損させたマウスでみられることが知られている。
 また、CD38を欠くマウスの血液や脳脊髄(せきずい)液を調べたところ、オキシトシン濃度が正常なマウスの半分強しかないことが判明。このマウスがCD38を再び作れるようにしたところ、血中と脳脊髄液中のオキシトシン濃度が上昇して異常行動も改善されたため、CD38がオキシトシン分泌に必須と結論づけた。
 オキシトシンは、親子やつがいのきずな形成など、社会行動に関連する物質として注目されている。

同様な研究は東北大学でも行われ、CD38はオキシトシン分泌を調節して社会行動を制御する [4]と発表されています。オキシトシンが足りなくなるとメスは子育てをしなくなり、オスは他の個体を認識記憶する能力が低下するそうです。
米エモリー大学(ジョージア州)では夫婦50組に、それぞれの抱える未解決の問題について模擬的に口論をさせる実験が行われ、「愛のホルモン」で夫婦間ストレスが減少 [5]すると報告されています。
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米クレアモント大学院大学からは、人間のオキシトシンのレベルは、信頼されているというシグナルを受け取ると上がる、という報告がされています。人間を親しくさせる化学物質 [6]
また、先に紹介したオキシトシンスプレーなる商品を生み出したもとになっている研究が、こちらです。嗅ぐと信頼が高まる物質―スイスの研究チームが実証 [7]
これは、被験者にオキシトシンをかがせて投資ゲームをさせると、嗅がせない場合の倍の人が、受託者を信頼して投資を任せたという実験です。
こちらはgooペットの幸せになるオキシトシン [8]というページです。「オキシトシン」が相手を信用したり、共感したりさせる働きを持つことを紹介し、スキンシップでオキシトシンが分泌されること、それがアニマルセラピーの科学的根拠であることを説明しています。
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また、麻布大学動物人間関係学研究室ドッグチームには「血中オキシトシン値による犬の幸福感の評価」 [9]という研究がありました。これは、アニマルセラピーに使われている動物が、苦痛と喜びのどちらを感じているのか分析した研究で、喜びを感じているという結論を導き出すのに、オキシトシンの血中濃度が高まっていることを根拠にしています。
もっと詳しく知りたい方は「いまさらオキシトシン@信用ホルモン」 [10]に、近年の研究が紹介されています。

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