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サルから人類への進化原因は?再考

1月27日のcenter_axisさんの記事「サルから人類への進化原因は?」 [1]に、mobanamaさんから

>そもそも、直立二足歩行に移行する過程で、足の親指の関節が硬くなって曲がらなくなったのなら、ゴリラやヒヒなどの地上派のサルは、なぜ足の親指の関節が柔軟で枝を握れる形態のままなのか
の部分について、「地上派のサル」は「直立二足歩行」をしていないので、反論としては成立していないと思うのですがいかがでしょうか。
突然変異が上流か、下流かはともかく、お説の中で直立二足歩行と、二足歩行を混同されているように見受けられるのが気になります。両者は別物です。

というコメントを頂きました。「何が問題になってるのかよくわからない 😥 」とお嘆きの読者の方も私の周りに見受けられたので、改めて整理してみたいと思います。
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◆地上派ザルの歩行
地上派ザルは基本的に四足歩行(チンプやゴリラはナックルウォーク)で、一時的に二足でも立ち、訓練すれば少しは歩けるようになる、という程度のものです。
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ニホンザルを使った二足歩行訓練(生理学研究所 [6]より)
なので、「地上派ザルは(直立)二足歩行しようとしてないんだから親指対向性がそのままなのは当然で、『直立二足歩行するために親指対向性を失った』という説の単純な反証事例にはならないのでは?」というのが、mobanamaさんの指摘だと思います。
※ちなみに、人類もチンパンジーと分岐する前(化石類人猿では1400万年前のドリオピテクスが最も近いとされている)は、ナックルウォークをしていた「地上派ザル」だった可能性が高い。
これはその通りだと思います。ただ、ここは元の引用投稿の筆者さんも多分同じで、地上派ザルの歩行と人類の直立二足歩行を混同していたわけではないと思います(「地上派ザルは二足歩行している」とは言ってないので)。
◆地上派ザルの現存は何を示唆するのか?
それは、「地上に適応するのに後肢親指の対向性を無くす必然性は薄い。」ということです。少し補足すると、
①大半の時間を地上で暮らすサルも緊急時の樹上逃避機能=親指対向性は失っていない。
②直立二足歩行に重要なのは腰骨の構造で後肢の親指の対向性を無くす必要はない。

(るいネット「肢の指の退化=適応説への反論」 [7]より)
③そもそも直立二足歩行自体、サバンナ暮らしにそれほど有利な歩行様式と言えない。
③については、2月2日の記事 [8]の引用で栗本慎一郎氏も触れています。つまり、樹上機能の喪失はサバンナ化等の環境変化より遥かに消極的な理由によるもので、ヒトの直立二足歩行の発明はそれ故の苦肉の策である可能性が高い、ということです。
この「遥かに消極的な理由」として考えられるのが、突然変異です。
◆突然変異は「下流」か「上流」か?
全ての進化は突然変異を伴いますが、この場合は「後肢親指の対向性を失う」ことです。大地溝帯のサバンナ化→サバンナ進出→突然変異→直立二足歩行、というサバンナ説は下流説になりますね。アクア説も同様です。
しかし、サバンナ説については上記の疑問のほか、2月4日の記事 [9]で紹介された「森の中で地上に降りた」トゥーマイも物的な反証事例(の候補)になっているし、アクア説は元々の環境変化自体の信憑性が何とも言えません。なので、まず上流に突然変異があり、それが逆境となって知能の発達や直立二足歩行など後の進化に繋がったと考えるのが、最も整合性が高いのではないかと思います。

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