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派手な姿は強者の証拠!?

ここのところ、ホルモン・免疫・副甲状腺等の人類の免疫機能、内分泌系機能、そして脳の分析記事が続きましたが、今回は、再び生物に戻って追求したいと思います。今回のテーマは「雌雄の肉体的特色」です。

一般の生物ではメスはむしろ地味な姿で、発情期の視覚的アピールを性闘争の手段としているオスの方がずっと派手だ。このことからも、真猿そして人類のメスの特殊性が分かる。(1月9日 『「性的存在」へと肉体改造を果たした、真猿のオンナ』s.tanakaさん)

確かに一般生物では、雌は地味な姿をしていることが多いです。中でも孔雀などの鳥類では、雄は非常に派手 であるのに対し、雌は地味。このような違いは、魚類の段階から既に存在しており、例えばグッピーやベタと言った熱帯魚では、雄は凄く派手でカラフルだけど、雌は非常に地味です。
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ベタ(ショーベタ:改良品種)のオス(上)とメス(下)
哺乳類では、ライオンやシカ、セイウチやゾウアザラシ等が雄が非常に派手 で、見た目ですぐに区別が付きます。
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立派なオスシカの角
なぜ雄が派手 なのか?
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その理由は、メスを巡って雄同士が争う闘い=「性闘争本能」に密接に関係があります。
ベタなどの熱帯魚が最も解りやすいですが、これらの魚は性闘争でお互いの「ヒレ」を攻撃し合い、相手の「ヒレ」をボロボロ にするまで闘い続けます。(でも殺しあうまではしない)
つまり、雄の特徴である「ヒレ」が美しい状態を保っている=強い雄の証拠 となる訳です。
哺乳類の鹿やセイウチでも同じで、雄は角や牙をぶつけ合って激しく性闘争を行います。
立派な角や牙は、ベタの「ヒレ」と同じように強い雄の証となります。
また、鳥類は一般的に羽をボロボロにするような性闘争は行いませんが、孔雀に代表されるように、その姿の立派さ を競いあって性闘争を行っています。
ヒレ・角・牙・羽、いずれも同じですが、立派な容姿を保とうとすれば、しっかりと餌を確保する必要があります。
(以前ベタを飼っていましたが、少し餌を与えないだけでヒレが急速にみすぼらしくなりました 🙁 。立派な容姿の維持には、それだけ食料確保が重要と言うことですね)
また、派手な容姿と言うのは、それだけ外敵に見つかりやすくなります。
つまり立派な角や牙、あるいはヒレや羽を有していると言うことは、それだけで外敵闘争を生き抜き、しっかり餌を確保できる優れた雄 と言うことになる訳です。
前述のベタなどの熱帯魚や哺乳類の場合は、これに加えて、その強さの証をぶつけ合って、同類闘争=性闘争を行っている訳で、生存圧力(=外敵圧力+食料確保)+同類圧力(=性闘争圧力)と言う過酷な圧力状況の中で、保たれる容姿の立派さ、派手さ と言うのは、まさに「強者の証」となる訳です。
雌は、確実に子孫を残す為、強い雄・優れた雄を交尾相手に選択します。
雄の精子は、卵子を作るのに比べエネルギーが少なくて済み,量も膨大に作れる為、多くの雌と交尾し、子孫を残すことができますが、雌の卵子は多くの栄養を含むため、作るのに多くのエネルギーを必要とし、精子のように沢山作ることはできません。その為、受精のチャンスは極めて限定的になり、その限定されたチャンスの中で、確実に強い子孫(=生き残れる子孫) を残す必要があります。
「強者」の遺伝子は、それだけ強い子孫を残せる可能性が高いので、雌は強い雄・優れた雄を交尾相手に選択する訳です。これを雌の「強者選択本能」と言います。
言うまでもなく、雄の「性闘争本能」はこの雌の「強者選択本能」と一体になって機能します。
雄が性闘争を行い、より強い雄・優れた雄の決着をつける。
雌は強者選択本能により、性闘争に勝利した雄と交尾する。
こうして優れた子孫 が残されていくと言う訳です。
この構造は、真猿・人類に至るまで変わっていません。
1月9日の記事「「性的存在」へと肉体改造を果たした、真猿のオンナ」に書かれているように、真猿時代、雌は性的役割へ収束⇒性機能収束したことで、性器・乳房の発達等の肉体改造(=性的な視覚アピールの強化)を行っていきますが、雄同士の「性闘争本能」が継続されていることに変わりはなく、やはり体格差や毛並みの派手さ等が「強者の証」である構造も変わっていません。(ボス猿は体格が大きく、毛並みも実に立派。マンドリルなどでは、強い雄ほど非常に派手な顔をしている。成長したゴリラ雄では、強い雄ほど「シルバーバック」と呼ばれる見事な銀色の毛並みをもつ)
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見事なシルバーバックを持つオス(画像は新学社様のHPよりいただきました)
逆に言えば、魚類から連綿と続いてきた、「性闘争を巡る雄の容姿の派手さ」と言う構造が霞む程、真猿、そして人類における雌の性機能収束が強く、それによる肉体改造(=性的な視覚アピールの強化)が、強力であると言うことができると思います。

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