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真猿の集団形態ってどうなってるの??

ここまで、原猿から真猿への進化における、視覚、聴覚、表情、そして共認機能の進化についての記事がありましたが、原猿から真猿への進化におけるもう一つの大きな特徴として、雄同士が集団を作り、集団同士で縄張り闘争をする種が現れた ということが挙げられると思います。

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温泉でくつろぐニホンザルの群れ

そこで今回は、真猿における集団の特徴を、その中心軸とも言える雄雌関係(婚姻様式)を中心に、いくつか紹介してみたいと思います

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ニホンザル
日本の下北半島から、南は屋久島まで、本州、四国、九州の各地に生息。
体長は50~60cmくらいで、雌より雄の方がやや大きい。
20~100頭の大きな群れを作って生活しています。ニホンザルの群れは母方の家系から構成される母系集団なのですが、ニホンザルの雄の間には、厳密な階級が存在し、高順位の雄は多くの雌と交尾することができます。また、群れの分裂・乗っ取りは群れ内雄が雌と交尾を盛んに行ったのち雄と雌が親和化して交尾が何故か「回避」されるようになり、雌が群れ外雄と交尾を盛んに行うようになって群れ外雄を引きつけて起こるようです。交尾が回避されるようになると雄は群れを出ることが多いのですが、これは近親交配の回避によるものとする説もあるようです。
さらに、雌においては妊娠成立後かなり日数が経過しても盛んに交尾をします。これはヒト以外の動物では極めて珍しいことです。しかも排卵日周辺と妊娠成立後では交尾相手が変化し、妊娠成立後に高順位の雄と多く交尾する傾向があるようです。
ハヌマンラングール
インド、スリランカの森林に生息。
体長は60cm~70cmくらいで、雌より雄の方がやや大きい。
この猿はハーレムタイプの猿で、複数の雌が一匹の雄に囲われます。群れで生まれた雌は群れに残りますが、雄は群れから出て若い雄の群れを作ります。成長した雄はやがてハーレムを持つ雄に攻撃を仕掛け、勝てばハーレムを所有することになります。
またその場合、当然ハーレムには、既に違う雄の子供を生んでいる雌がいます。子供のいる雌は雄の生殖行動に抵抗するので(子供が頻繁に乳を吸っている限り、雌は発情もしなければ、排卵も起こしません)、新しい雄はこのままでは交尾できません。そこでこの雄は、子供を殺すのです。こうすることで、雌は殺した雄に発情するようになり、交尾が行われます。
テナガザル
インドシナ、マレー半島からスマトラ島、ボルネオ島にかけての熱帯雨林に生息。
体長は45~90cmくらいで、雄と雌の体格差はほとんどない。
ペア型社会のテナガザルの社会では、ほぼ完璧な一夫一婦制で、子供を含めた4頭程度の群れを形成しています。ひとたびペアになってしまえば、オスどうしがメスをめぐってあらそう必要がありません。そのため、オスはことさら腕力・知謀に磨きをかけることもなく、メスの発情機会を独占的にものにし、自分の遺伝子をのこせる。オスとメスの体格に大きな性差がないのは、だいたいそのような理由によるものであると思われます。子は5~6歳ごろまで家族といっしょにいて、その後巣立っていきます。
オラウータン
ボルネオとスマトラの熱帯雨林のかぎられた地域に生息。
体長は1.1~1.4mくらいで、雌の体重は40~50kg、オスは60kgから大きいものになると100kgにも達し、雄と雌の体格差が大きい。
普通、雄、雌ともに単独行動をしています。グループをつくるのは、雌とその子供からなる子育て段階にある母子家族ぐらいのものです。通常、有力な雄が一定地域をテリトリーとしてもち、複数の雌がそのなかで単独生活し、発情すればテリトリーを保守する雄がほとんど独占的に交尾し、子孫を残します。
テリトリーをもたない若い雄が、よそのテリトリーに侵入し、こっそり雌とコトにおよぶ場合、雌は激しく抵抗し、しばしば激しい暴力ざたになることもあります。ただし、テリトリー守備雄も、若い遊軍雄も、コトをすませばそれっきりです。交尾の前後でさえ、雄と雌が一時的にせよペア生活をすることはありません。
1回に生まれるコドモの数は1頭です。2歳半~3歳頃に離乳しますが、6歳~9歳頃まで母親と一緒に行動する。雌は10歳頃、雄は15歳頃オトナになる(性成熟に達する)が、野生下で雄が最初のコドモを出産するのは13歳~18歳頃と言われています。出産間隔は6年~9年で、霊長類の中では最長です。
マウンテンゴリラ
アフリカ中部の山地の多雨林に生息。
体長は1.5~2mくらいで、雄と雌の体格差は大きく、体重差にして雄の方が2倍近くなることもあります。
社会的単位はリーダーのシルバーバック1頭、まだ背の黒い亜成体の雄1~2頭、成長した雌数頭、そして多くて10頭ほどの子ゴリラたちで構成されていて、5~30頭の家族集団で暮らし、移動します。集団内での争いはほどんどありません。シルバーバックだけが雌と交尾します。
雌が性的に成熟するのは7~8歳で、数年後に最初の子を産みます。雄は通常は早くても15歳までは交尾しません。妊娠期間は約258日で、雌は普通、3年半から4年半ごとに1頭の子を産みます。
雄も雌も性成熟前に生まれ育った集団を離脱します。雌は離脱後すぐに単独生活をしているヒトリ雄か、別の集団へ移籍しますが、雄は別の集団へ移籍することも元の集団へもどることもできません。離脱後しばらく単独で森を放浪し、やがて他集団から雌を誘い出してきて自分の集団をつくります。
最初のうちは雌が出たり入ったりするが、そのうち出産すると雌は雄の元に定着するようになります。こうしていったん雌と子どもを得ると、雄は生涯その集団の核雄として居続けることになります。それは、ゴリラの社会では集団の外から別の雄が加入してきて核オスを追い出し、その集団を乗っ取るということが起こらないからです。
ただ、核雄が老境に達すると息子達が性成熟後も集団に残るようにあり、やがて核雄の死後はその集団を継承するようになります。その点では、やや父系的な色彩を持っていると言えます。
チンパンジー
アフリカ西部から中央部の湿潤な森林、疎開林、サバンナに生息。
体長は70~90cmくらいで、雄雌の体格差は、体重差にして最大で雄は雌の1.5倍くらいになる。
20~100頭程度の複雄複雌からなる社会的集団を形成して生活しています。しかし普段は果実食に適応した4~5頭の小集団を、主に母子関係や雄間の同盟を元に構成して遊動します。
チンパンジーは、雌は一般的に出産可能な年齢になると、生まれ育った集団を離れ、他の集団に移りそこで子供を産む一方、雄は出自群に留まり、大人の雄同士の強固な連帯を形成しすることで集団を維持する複雄複雌の父系集団です。しかし特定の雄雌関係にもとづいた繁殖をしないので、ヒトの社会における父親に相当するものはないと考えられています。また、雄の個体間には順位差があり、雄同士の衝突(序列争い)が頻繁に行われます。
さらに規範を破った(他集団の雄と浮気をした)雌を(見せしめのために)殺すことがあります。チンパンジー集団同士の縄張り闘争で、敵の集団のチンパンジーと殺しあうこともあります。
コモンマーモセット
北東ブラジルのピアウイ州からリオデジャネイロ州に生息。
体長は20cmくらいの小型の猿で、雄と雌の体格差はほとんどありません。
1組の繁殖ぺアとそれに最高4世代にわたる仔供たちと、時には、もう1頭の成熟個体を含む2~9頭の群れをつくる一妻多夫型の社会を形成します。群れ内では繁殖雌が最も優位です。
出産は1年2回位。1産2仔が多く、おもに父親が子を抱き、授乳のときは母親に渡すという育児形態をとります。

これらはすべて、置かれた環境に対する適応の結果としての集団形態であったり体格差であったりするわけです。同じ真猿同士でもこれだけ違いが出るというところに、進化のというものの奥深さを感じました 😀

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