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オスメス分化の番外編(雌雄同体)

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あまり知られていませんが、ナメクジやカタツムリは雌雄同体の生き物です。精子と卵子を一つの固体が同時に持っているのです。では、ナメクジは一匹で子供を生むのでしょうか、それとも交尾をするのでしょうか。交尾をするとしたら、オス役メス役に分かれるのでしょうか。答えを知りたい方は押してから次に。
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答えは、二匹で交尾して二匹とも卵を産むが正解でした。詳しくはこちらをどうぞ。
ナメクジの産卵(グリーンコミュニケーション [4])
カタツムリの産卵(カタツムリの館 [5])
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カタツムリの交尾(カタツムリの館 [5]より)
雌雄同体には、同時的雌雄同体と機能的雌雄同体があります。同時的雌雄同体は一匹で自家受精できるタイプと、2匹が交尾して受精するタイプに分かれます。そして機能的雌雄同体は、オスに生まれて成熟してメスになる雄性先熟と、オスとして生まれメスになる雌性先熟があります。(雌雄同体編:用語「貝」説! [6])
一匹で自家受精できる事例にイタヤガイがあります。精子と卵を放出するタイプの生殖形態であるため、自家受精してしまうようですが、養殖をするうえで自家受精で生まれる子供は成長が悪いと言われ、自家受精させない方法が研究されているようです。(イタヤガイの自家受精防除の検討 [7]
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イタヤガイ(魚類市場図鑑 [8]より)
同じ、精子と卵子を放出する海の生き物でも、ホヤは卵膜に自家受精が起こらなように特殊なたんぱく質を結合するという発達をとげています。(マボヤ卵黄膜タンパク質HrVC70は自己と非自己の精子を識別しうる [9])
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ホヤ(市場魚類図鑑 [10]より)
機能的雌雄同体で「雌性先熟」する生物として、ベラ科・ブダイ科等があげられます。これらは集団で生活する習性を持っていますが、その中で最も体の大きくなった1匹だけがオスに変化します。このオスは、グループのメスを独り占めし、集団を外敵から守るという役割をもっています。もし、このオス以外の個体がオスになったとしても、体が1番大きいオスに淘汰されてしまいますので、メスを勝ち取って、繁殖することができません。それならば、オスにはならずにメスのままでいて、自分の遺伝子を残そうと考えるのです。また、リーダーであるオスが死ぬなどして空席になると、多くのメスの中からまた新たに1匹のオスが誕生します。このように、集団として規律の取れた繁殖形態をとるのが「雌性先熟」です。
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ベラ(香川の魚 [11]より)
「雄性先熟」はクマノミが代表的です。クマノミはその生活のほとんどをイソギンチャクに依存しています。クマノミはイソギンチャクという限られた生活の場で暮らすことから、
多くの配偶者と出会う機会が少ないため、一夫一婦制という確実に繁殖相手を確保できるスタイルを選び、自ら卵を沢山産むという戦略をとったのです。
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クマノミ(ハコフグネット [12]より)
先に見た、ナメクジやホヤなどの同時的雌雄同体の生物は移動能力の低いものが多く、少ない生殖機会を最大限に活用するために雌雄同体の戦略をとっていると考えられています。
しかし、世の中にはいろんな生き物がいるようで、アマゾンには脊椎動物で唯一自家受精が出来るメダカ「リヴルス・マルモラトス」が存在しています。(雌雄同体魚リヴルス・マルモラトスの生殖巣発達過程の解析 [13])
容易にクローンが得られ,飼育が簡単であること,薬剤感受性が強いことから,アメリカでは環境汚染物質のバイオアッセイに用いられているそうです。(長崎大学水産学部坂倉良孝 [14])
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リヴルス・マルモラトス(ブラックジャックの部屋より [15]
このメダカは、どのような適応戦略から雌雄同体になったのか、皆さんも考えてみてはいかがでしょうか。

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