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ヤクザル物語(前編)

こんばんわ。ken太郎です。
真猿の中でも最も身近な日本ザルの特徴について紹介します。
まずは基礎知識!基本的なニホンザルの社会についてウィキペディアから抜粋します。
強力な統率力をもつボスザルとそれを取巻くメス、子供を中心として、他のオスは周辺部に位置し中心部に入ることが許されないという「同心円二重構造」として群れの社会構造が説明されている。ニホンザルの社会の仕組みについては、以下のようなものと考えらている。
・群れを構成するのは成体の雄と雌、および子供と若者である。群れに入らない離れザルがあるが、これは必ず若いか成体の雄である。
・群れの個体はすべての個体間で強弱が決まっており、全体として直線的な順位制を持っている。順位が高いものに対しては尻を向け、上位者がその後ろから乗りかかるマウンティングという行動があり、これによって順位が確かめられると同時に、争いが回避される。順位が離れるほどこの行動はおこなわれなくなる。
・単なる順位制でなく、階級があって、それぞれに群れの中での位置が決まっている。
・リーダーは中央に、その周囲に雌と赤ん坊、その外に若者雄が位置する。
・リーダーは外敵から群れを守り、また、群れ内部での争いに介入して調停する。

上記を頭に入れた上でニホンザルの亜種である屋久島のヤクシマザル(通称ヤクザル)の事例報告からサルの実態を見ていきたい 🙄 と思います。
yakuzaru-2.jpg
以下はニホンザルホームページ「ヤクザルの生活と社会」http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/FuscataHome/yakuzaru.html [1]から抜粋しました。
(遊動域)(発達)(集団構成)(社会関係)(繁殖)(集団間関係)の5つの面から生態と分析を報告します(分析は私の独断と偏見が多少入っていますが・・・・)
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(遊動域)
サルの群れが日常的に利用している地域、すなわち遊動域は、その群れに何頭のサルが含まれているかによって、だいたい決まっています。西部林道周辺の低地の広葉樹林地帯では、20-30頭の群れは1km^2弱の広さをつかっています。これは、他の地域にくらべてとても小さいのが特徴的で、森が豊かなことと対応しています。たとえば、冬には雪におおわれる下北半島では、一つの群れが30km^2近くの遊動域をもっていたことがあります。群れと群れの遊動域は少しずつ重なりあっていることがおおく、それぞれの群れは、群れのメンバーが変わっていっても、何年にもわたって同じ場所で生活を続けていきます。また、それぞれの群れには、遊動域の中によく使う食べ物の木や、毛づくろいする場所があって森の利用の仕方も世代を越えて受け継がれていきます。
⇒この報告からサルの行動範囲は食料事情・集団規模・闘争圧力等が関係する事がわかります。屋久島は狭い島なので、長期間で個体数が安定する中で集団闘争は厭戦状態になって縄張りが安定したのでしょう。サル集団としては比較的小さな規模で数匹のオスで毎日1km圏内を分担して見回りをしているのでしょう。
それにしても下北半島のサルは餌がなくなる冬には30kmまで広がるとは・・・ここまで拡がるととても縄張りは確保できませんね。また、縄張りは世代を超えて維持されていき、まさに縄張りはサルにとっては何世代にも渡る故郷です。生まれてきて死ぬまで同じ場所で暮らしているんですね。

(発達)
ニホンザルの寿命はだいたい20-25歳です。大きく分けると0歳から1歳までをアカンボウ期、1歳から4歳までをコドモ期、オスでは5歳から9歳ごろまで、メスでは5歳から6歳ごろまでをワカモノ期、それ以降をオトナ期として区別できます。アカンボウは母親に全面的に依存しており、この時期に母親が死ぬとほとんどのアカンボウは死んでしまいます。1歳ごろから離乳して、コドモ同士で頻繁に遊ぶようになります。4歳になると、オスはたいてい射精可能になり、またメスは発情し始め性成熟をむかえます。もっとも、妊娠をするのは初発情から少し間があって、だいたい5- 6歳が初産です。体が完全に成長してオトナにひけをとらなくなるのがオスでは10歳をすぎるころ、メスでは7-8歳になります。腰が曲がったり、毛がうすくなって、老化がはっきりとしてくるのは20歳近くになってからのようです。お年寄りのメスの場合、妊娠しにくくなり、出産しなくなってからも何年か生き存える例が知られています。
アンダーラインの部分重要です。 というのも人間も同じだからです。人間の赤ん坊は全面的に母親に依存している。サルも人間も生体としてはネオトニーといって不完全な状態で生まれてきます。生まれてしばらくは他の動物で言えば胎児なのです。サルですら1歳まで母親と密着して暮らすのです。人間はゼロ歳保育などと言ってまだ赤ん坊なのに外に預ける母親がたくさんいます。問題が出るのは当たり前ですね。
人間の寿命が75歳とすれば上記の年齢に3倍掛けると適齢期になります。
つまり母親密着は3年、仲間世界に出るのは3歳から、12歳には射精が可能になり、15歳から18歳が出産適齢期、大人に引けをとらなくなるのはオスが30歳、メスが24歳。・・・こんな感じでまさにサルの成長は人間と同じなんですね。

(集団構成)
ひとつの群れは、複数のオトナのオスと複数のオトナのメスとそのコドモたちから構成されています。オスはメスよりも少ないのがふつうです。群れで生まれたコドモのうち、メスは生涯を生まれた群れで過ごしますが、オスは性成熟に達する 4ー5歳ごろに生まれた群れを出ていってしまいます。こうして、群れの中には血縁関係によって結ばれたメスとコドモたちと、血縁のつながりのないオスたちが一緒に暮らすことになり、メスが家系をつなぎながら、群れは世代をこえて維持されていきます。新しい群れに入ったオスは、その群れからも3年ばかりするとでていってしまい、生涯にわたっていくつもの群れを点々としていきます。
このような社会集団の仕組みを「母系的複雄複雌群」とよんでいます。世界のさまざまな地域のサルが詳しく調べられるようになって、ニホンザルの仲間やそのほかの多くのアジアやアフリカのサルも同じ様な社会をもっていることがわかってきました。ただし、どのようなサルでも同じというわけではありません。たとえば、チンパンジーではオスではなく、メスが集団を移ります。
⇒人間社会も500万年の内99%は母系社会で生きてきました。この社会の仕組みは実はサル時代の3000万年前からあったんですね。オスは外に出て行く、これも3000万年間の霊長類の最大の特徴なんです。引きこもったり、ニートしているのはオスじゃあないという事になりますね。 🙂
ちょっと長いので後3つは次回!

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