2006-07-16

進化における「自然圧力」と「種間圧力」と「個間圧力」との関係構造

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さて、先日の過去ログ『もっとも強い不全を抱えた生物がもっとも進化した』→リンクでこんな事を書いたが…
>「その時点で最も適応できていない、周囲に比べて著しく立ち後れた生物ほど次の次元の新機能を獲得することにより複雑化・高度化してきた」
>例えばこんなこと。その環境に適応している生物は基本的に表現型を変える必然性がないため、長期にわたってほとんど変化しない(古細菌、カブトガニ、シーラカンスなど)。次の段階へ進化する生物は、それまで適応できていた安住の地を追われて、新たな環境に挑戦しなくてはならなかった生物たちだった。

「逆境がきつければきついほど進化するんだ」というのは、厳密に考えていくと語弊がある(これは事実に反する。言い過ぎ^^;)。
つまり“最も適応できていない”んだったら生き残れないやん。死んでまうやんけ。とツッコまれると「その通りです」というしかない。
当然、死んでしまったら(絶滅してしまったら)「進化」もへったくれもない。

リンクこの過去ログの人類もそうだが、ギリギリのところで絶滅を免れて生き残っている、という前提でなくては話にならない。
強烈な逆境の中でもかろうじて命をつないで、その結果壁を乗り越えたら、気付いた時にはいつのまにやら「進化」していた…ということだろう。
物理的な外圧の極端な変化(極端な例だが、今すぐ平均気温が30度上がったり、酸素が大気の2%になったり、水が全部凍りになっちゃったり)があったら、ほとんどの脊椎動物は死滅してしまう。
>例えば、古生代と中生代の間の「PT大量絶滅」、中生代と新生代の「KT絶滅」などですリンク 阪本氏)
このようにして、過去にも何度かの大量絶滅が起こってきた。
※画像の出典はここから↓
リンク
強力すぎる自然外圧は、生物の種を大胆にバッサリと削っていく。そんな中では、種は多様化・適応放散するどころか、どんどん絞られていく。
1.もし、その中でかろうじて生き残ることができれば、その自然外圧に対応して適応的な生物種が優勢になり、獲得した本能でもっとも生きやすいニッチを占める。
2.そこで種が多様化してきて、新たにできた種の間での生き残り闘争が始まる。「自然外圧」には適応できてるということが前提で、もっぱら、種間の闘争に有利な機能をいかに獲得できるかという競争になる。
他の様々な生物種の関係性の中でうまいことニッチを獲得しえた生物群はそこに居座れるが、その群の生物が生きられる物理的環境を追われる生物群も出てくるだろう。
前者は、何億年何百万年と形態を変えない生物(古細菌、カブトガニ、シーラカンス、ゴキブリさんなど)で、後者は、変化し複雑化し続けてきた生物群(真核生物さらに哺乳類~サルそして人類に至る系譜)である。
3.で、種間闘争において安定したニッチを獲得できた状態では、その生物種内の個体間闘争(もっぱら性闘争)が圧力として認識されるようになる
この、外圧の“次元”“段階”というものを考えて初めて、生物の適応原理や進化が構造化できるのではないかと思うのである。

簡単に言うと…
*「自然外圧」に適応できていなければ、「種間闘争」どころではない。
*「種間闘争」において生物学的ニッチを押えていないと、「個間闘争(性闘争)」どころではない。

(よーするにメシも食えてないのに戦争どころではない^^;)
っと言ったところだろうか(これまた厳密に言うと、生物はこれら全ての外圧に同時に適応していないと生きられないので、あえて概念区分したとしたら生物にとっての優先順位は上記のように認識されるだろう…、という意味で捉えてください)。
上記を整理するうえで、非常に参考になる投稿があるので一番下に紹介しておく。ぜひ読んでみてほしい。
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(1)外圧環境への淘汰適応態
 全ての生物は外圧環境に対する適応態である。自然圧力に対する適応、他の生物(他の種)との間で生み出される圧力に対する適応、そして同じ種(あるいは群)内部で生じる個体間の圧力に対する適応態として存在する。それぞれの環境の生み出す圧力状況下で、対自然闘争・外敵闘争(種間闘争)・個間闘争が活性化され淘汰適応していくのである。そして、生物はさまざまな適応戦略をとっていくことになる。
 
*自然圧力とは、生物を取り巻く物理的・化学的・地学的条件であり、総じて自然環境一般をさす。特に進化において問題となるのは、この自然圧力の変化・環境変化である。生物が刺激を受けてから反応するまでの機能に決定的に関わる条件変化である。もちろん、ミクロ的には物質交換をする場合の物質の量も環境要因に入れる。たとえば、植物の場合は光合成をするための日光の強さや二酸化炭素濃度や水の量など。
(2)外圧環境の圧力構造と力学
 自然圧力と種間圧力と個間圧力、これらの3つの外圧は常時作動しうるものであるが、常に同じ大きさの圧力が働いているのではなく、その大きさは地球レベルの気候周期によって、あるいは宇宙レベルの突発事故によって、あるいは他者の適応(変異、進化)戦術の変更によって変動するのであって固定的に捉えるべきではない。つまり、自然環境は無限定の情報(ゆらぎ)に満ち溢れている。ただし、生物(ここでは種を指す)に加わる外圧の大きさは、外圧環境により違いがあるわけで、その力関係をここで明らかにしておく。考えやすいように、例えば地球規模の自然環境の大変化(例えば、急激な乾燥とか急激な温度変化など)があった場合にどうかを想定して述べる。
1.まず大変化の初期段階では、「自然圧力」が主圧力となる。
 自然環境の大変化により生物の機能が停止する危機=絶滅の危機に瀕しているわけで、この段階の種(あるいは個体)にかかる外圧は、自然圧力>>種間圧力>個間圧力であり、生物にとって対自然闘争に勝つことが第一義的な意味を持つ。
2.中期段階では、「他の生物との種間圧力」が主圧力となる。
 自然環境の激動に適応した複数の種は新しいニッチを巡って競争関係に入る。自然圧力に一定適応している(外圧が下がる)ため、種間圧力>自然圧力>個間圧力であり、種の違いとは機能や形態が違うわけで、その種内の個体間の闘争の生み出す圧力など問題にならない。むしろ個体間の闘争が激化すれば、他の種によって滅ぼされる危険性すらある。つまり、この種間闘争は種の滅亡を伴うほどの競争圧力を生み出すのであって、個体間の闘争によって生み出される圧力よりはるかに大きい。従って、ここでの適応戦略は、さまざまな可能性戦略を生み出し、進化の方向性を決めるほどの大戦略となるだろう。
3.後期段階では、「同じ種内の個間圧力」 が主圧力となる。
 他種との共存あるいは競争の決着によってその種間の圧力が一気に下がった状態(自然圧力の低下及び種間圧力の低下=外圧低下)、その種にとって安定的な状態。ただし、無圧力状態になるわけではなく、それまで抑えられていた個間闘争圧力が上昇する。つまり、個間闘争圧力>自然圧力・種間圧力。自然圧力と種間圧力は種間闘争をどのような戦略で突破した種がどのような状態であるかによって強弱が違ってくる。この個間闘争には捕食闘争と性闘争(性淘汰)が考えられるが、外圧が極めて低いという段階での餌の奪い合いはほとんど意味をなさないので、この個間闘争の中でも性闘争の圧力が主圧力になると考えられる。(以下略)

List    投稿者 staff | 2006-07-16 | Posted in ①進化・適応の原理No Comments » 

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